2014年01月11日

聖夜乙女雪乃 終章(4)

翌日も私たちはまたモノクロームの世界で化け物を探していた。

だけど、私たちがいくら必死にモノクロームの世界の中を探しても化け物は見つからない。

化け物の魔力を探知しようとしても、一向に引っかからない。

ここまで手がかりがないと、どうしたら良いのかわからなくなってしまう。

本当はネージュのようにもっと必死になって街中を走り回らないといけないのだろうけど、私はそんな気分ではなかった。

昨日見た変な夢のせいでいまいちテンションが上がらない。

あの時のことを思い出してしまうと、いまも身体がちょっと震えてしまう。

それだけ衝撃的な夢だった。

『あの夢は一体なんだったんだろう……』

私は無意識のうちに立ち止まっていた。

ふと、モノクロームの世界の空を見上げる。

現実の世界とは違い、この世界の空に色はない。

なんとなく、このまま空が夢で見た光景のように真っ黒に染まっていくのではないかと思ってしまい身震いしてしまう。

そんなことはないとわかってはいるけれど、私は思わず自分の肩を抱いてしまう。

//ネージュ
「だ、大丈夫?」

私の異変を感じたのか、ネージュが声をかけてくれる。

//雪乃
「う、ううん、なんでもない、なんでもないよ」

ネージュにこれ以上心配をかけるわけにはいかない。

私は大げさに両手を振って見せて何でもないことをアピールする。

だけど、どうやらそれは逆効果のようだった。

ネージュは何かを探るような瞳でジッと私を見つめてくる。

//雪乃
「な、なによ……」

目を逸らしながら口を開く。

//ネージュ
「昨日、何かあったの?」

ネージュの言葉に、私は思わずビクッとしてしまう。

『し、しまった、これじゃ、何かあったって言っているようなものだ……』

恐る恐るネージュを見ると、ネージュは私をジッと見つめたままだ。

私は慌てて視線を逸らす。

//ネージュ
「何があったの?」

//雪乃
「べ、別に何も……」

//ネージュ
「もう、どうしてそんなバレバレの嘘をつくのよ」

ネージュの呆れた声。

確かにネージュの質問に身体が反応してしまっては、いまさら何でもなかったとは言えない。

『別に大事なところは言わなければ良いんだし、言ってもいいかな……』

//雪乃
「え、えっとね……」

//ネージュ
「うん」

//雪乃
「昨日嫌な夢を見ちゃってさ……」

私の言葉にネージュの表情が一瞬で変わる。

『な、なに? なんでそんな顔をするの?』

驚いた表情を浮かべたままのネージュに問いかける。

ネージュは私の言葉には答えずに、何やら難しそうな顔をしてブツブツと言っている。

私は何か変なことを言ってしまったのだろうか。

//雪乃
「ねぇ、一体どうしたの? ねぇってば」

//ネージュ
「あ、う、うん、ごめん」

私の声に返事をしてくれたけれど、やっぱりネージュは心ここにあらずといった感じだ。

今度は難しそうな顔をして何やら考えている。

//ネージュ
「あ、あのさ」

//雪乃
「な、なに?」

真剣な表情と口調でネージュが私を見つめる。

その気配に押されて、私は若干後づさりながらもネージュに返事をする。

//ネージュ
「嫌な夢をみたって言ってたけれど、どんな夢だったのか記憶はあるの?」

//雪乃
「う、うん。すごい悪夢だった」

内容は言いたくないので、悪夢とだけ答えておく。

私の言葉に大仰に頷きながら、ネージュは質問を続けてくる。

//ネージュ
「あのね、言いたくないかもしれないけれど、大事なことだから出来れば答えて欲しいのだけどね」

//雪乃
「な、なに……」

背筋に嫌な汗が流れる。

真剣なネージュの表情から察するに、とても答えづらい質問なんだろう。

だけど、この質問にはきっと答えなければならないのだろう。

思わず私の喉がゴクリと鳴ってしまう。

//ネージュ
「目覚めたときにね」

//雪乃
「う、うん……」

//ネージュ
「もしかしたら、漏らしてなかった?」

//雪乃
「なっ!!」

どうしてそれを知っているのだろう。

確かに私は悪夢を見たあとに小便を漏らしていた。

だけどそれは誰にも言っていない。

この歳になって小便を漏らしたなんて恥ずかしくて誰にも言えない。

なのにネージュはズバリ聞いてきた。

何か思い当たることでもあったのだろうか。

//雪乃
「うっ、あっ、うっ……」

カァッと私の顔が熱を帯びていくのがわかる。

きっと今の私の顔は羞恥心で真っ赤になっていることだろう。

『こ、これじゃ答えなくても、そうだって言っているようなものだよ……』

恥ずかしくて泣きたくなってしまう。

自分が漏らしたなんてことなど言いたくはない。

//雪乃
「ど、どうしてそんなこと聞くのよ」

もうバレバレかも知れなかったけれど、私はそう言って言葉を濁す。

言ってから、私は頬を真っ赤に染めながら恐る恐るネージュを見つめる。

ネージュは、微笑んでいるような、それでいて泣いているような複雑な顔をしていた。

//雪乃
「ど、どうしたの?」

ネージュが何を考えているのかわからずに、私は思わず聞いてしまう。

//ネージュ
「私もね、そうだったから……」

//雪乃
「えっ?」

//ネージュ
「私もね、悪夢を見たことがあってね、それで起きたら漏らしてしていたの……」

//雪乃
「そ、そうなんだ……」

ネージュも同じだった。

『じ、自分と同じような経験をした人がもう一人いたなんて……』

ネージュの言葉に、私はどう反応してよいのかわからない。

そんな私にネージュは自分の経験を話し始めた。

//ネージュ
「悪夢から目覚めたらね、私は服を着たままだったのに汚物を大量に漏らしていたの。それでね……」

ネージュは思い出したくもないのか、そこで一旦言葉を区切る。

私も黙ってネージュの言葉を待つ。

暫くして、ネージュは大きく息を吸うと、再び話し始めた。

//ネージュ
「それで、それでね、汚物で汚れていた私の股間でね……その、何かが蠢くような、そんな嫌悪感に襲われていたの……」

ネージュはそう言ったきり黙りこくってしまう。

自分はお漏らしをしたことがあるなんてことを平気で言える人なんていない。

それでもネージュは私に言ってくれた。

もしかしたら、私もそんな経験をしたのではないかと心配してくれてのことなのだろう。

だったら、だったら私もその気持ちには真摯に答えなければいけない。

それに、ネージュも私と全く同じ経験をしていたのだから。

//雪乃
「あ、あのね……」

//ネージュ
「ええ」

//雪乃
「わ、私もね、その、悪夢から目覚めたらね、あ、あなたのように、た、大変なことになってたの」

やっぱり恥ずかしくて、私は大事な部分をぼかして伝えることしか出来なかった。

だけど、ネージュはそれだけで理解してくれたようだった。

//ネージュ
「そう……」

ネージュは優しく微笑んで、私をギュッと抱きしめてくれる。

それだけで、私は何だか救われた気分になってしまう。

私は暫くの間、暖かいネージュの体温を全身で感じていた。

//雪乃
「そ、それで、あれは、一体なんだったのかな?」

ネージュに抱きしめられて落ち着いた私は疑問を口にする。

悪夢を見ただけで漏らしてしまうなんていくらんでもおかしいと思う。

しかもネージュも同様の体験をしているのだから、何か別の原因があると考えるのが妥当だ。

ネージュもそう思ったのか、私の疑問に顎に手を当てて考えている。

//ネージュ
「もしかしたら……」

//雪乃
「う、うん」

何かを思いついたらしいネージュの言葉を黙って待つ。

さすがに魔法少女として長い間戦ってきただけあって、この手の問題には強いのかも知れない。

//ネージュ
「もしかしたら、夢喰いとの戦いで身体の奥にまだ除去しきれていないモノがあったのかも……」

//雪乃
「除去しきれてなかったものって?」

//ネージュ
「連中の精子よ……」

//雪乃
「えっ」

ネージュの言葉に絶句してしまう。

まさか夢喰いに出された精子がまだ私の腹部に残っているなんて言われるとは思わなかった。

思わず自分の腹部に手を当ててしまう。

だけど、ネージュの言葉はそれで終わりではなかった。

//ネージュ
「考えたくはないけれど、残った精子のせいで受精してしまっているのかも知れない……」

//雪乃
「そ、そんな……」

ネージュの言葉は、私を奈落の底につき落とすのに充分過ぎる破壊力を持っていた。

私は、あまりのショックで目の前が真っ暗になっていくのを感じていた。



posted by -Noel Valkyrie制作委員会- at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 聖夜乙女-雪乃-
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