2011年08月17日

聖夜乙女雪乃 二章(5)



//雪乃
「も、もしかして……」

『夢憑き』という単語が私の脳裏に浮かび上がる。

私は影の正体を確かめようと、勢い良くビルの中へと駆け込む。
そして……不穏な空気が、肌をゾワリと撫でるような感覚に襲われ、自然と立ち止まってしまう。

『か、囲まれてる?』

いつの間にか、たくさんの視線が私の身体に絡み付いてた。
どう反応したら良いのかわからずに、私はその場に立ち尽くしてしまう。

私の身体に絡みついた視線は一向に消えず、それどころかさらに視線は増えているかのように感じる。
影からコソコソ見られる感触に、背中に冷たい汗が流れる。

//雪乃
「な……に、これ。気持ち悪い……」

私の声がモノクロームの世界にこぼれては、スッと消えていく。
その間も周囲から私を見つめているような視線は、肌にゼリーを塗られているようにネットリと張り付いていくようにまとわりつく。

ザリッ

//雪乃
「ッ!?」

砂利を踏みしめるような音に、思わず身体をこわばらせ、そちらへと視線を向ける。
すると、ゾロゾロとあちこちから男たちが私の前に姿を現してくる。

男たちの顔には生気がなく、瞳は腐った魚のように濁っていた。

明らかにまともでない様子がわかってしまい、私はゴクリと喉を鳴らす。
男たちはジワリジワリと間合い詰め、気がついたら私は男たちに取り囲まれていた。

『こ、こういう時はどうしたら……?』

私の額に汗が浮かぶ。

いつものような化け物なら有無を言わさずに攻撃を加えるのだけど、ここにいるのは『夢憑き』……つまり、人間な訳で。

私が魔法少女の力で相手を殴りつけたら、どうなっちゃうんだろう?

化け物が相手なら、殴ったり、蹴ったりしないと、私が犯されちゃうのだから……倒さなくちゃいけないって考えられる。
だけど、この男の人達にそんな事をしたら、死んじゃうかも……しれない。

//雪乃
「こ、こないで……ッ!」

だけど『夢憑き』の男達は私の言葉など気にもならないようだった。
空ろな瞳のままで私へと迫ってくる。

『と、とりあえず、逃げないと……っ。こんなの、恐い……訳わかんないよ……ッ!』

辺りには私しかいない。
自分一人で対処が出来ない以上は、サンタ少女にアドバイスを貰うべきだ。

そう思い、私は慌てて後ろを振り向き……


//雪乃
「えっ!? は、はぐっ!!」

驚いて棒立ちになっていた私の腹部に衝撃が走る。
見ると、男の拳が深々と突き刺さっていた。

//雪乃
「そ、そんなっ……い、いつのまに……」

私はいつ男に攻撃されたのか全くわからなかった。
混乱しながら、私は腹部を殴られた痛みに顔を歪ませてしまう。

//雪乃
「くっ、こ、このっ……」

ここで倒れ込む訳にはいかない。
痛みに耐えながら、私は再び拳に魔力を集中させる。
だけど、それよりも早く再び私の腹部に男の拳がめり込む。

//雪乃
「えぅっ……うぇっ……」

腹部を殴られた衝撃で息が出来ない。
集中力も途切れてしまい、私の意識が混乱して、どうしたらいいのかわからなくなる。

『ま、まずい……』

魔力を集めて……この場を切り抜けようと集中するけれど、痛みがそれを邪魔する。

何よりも、目の前にいる物言わぬ男たちの威圧感に私は完全に怖気づいていた。
男たちは未だに抵抗しようとしている私に容赦なく拳を振るってくる。

すでに避けるだけの力は私には残っていなかった。

//雪乃
「うぁっ……あ、あぐっ……」

男の拳を腹部に何度も喰らってしまい、私はとうとう地面に片膝をついてしまう。

『こ、このままだとっ……だ、だめなのにっ……』

顔をしかめながら、私は何とか立ち上がろうと身体に力を込める。
同時に、痛みで上手く集中できなかったけれど、それでも集められるだけの魔力を集めようとする。

男たちは魔力に反応しているのか、私が魔力をためる度に意思なんて全然こもっていない瞳で攻撃を仕掛けてくる。

その姿は私に恐怖心を頂かせるには充分すぎる姿だった。

逃げようだとか、抵抗しようという気持ちより。
殴られる恐怖から逃れる為に身体を丸め、相手から逃れたい一心で必死に叫ぶ。

//雪乃
「や……やだっ……こないでっ……もうっ……やめてよぉっ!!」

恐怖に我慢出来なくなった私は、ついに男たちに許しを乞う悲鳴を上げていた。
だけど男たちの攻撃は収まらない。
わらわらとまるで砂糖に群がるアリのように私の身体へと殺到してくる。
もう魔力を集中してためるどころでは無かった。


男によって掴まれた腕を降りほどこうとした途端、別の男の手がどこからか伸びてきて私の身体の自由を奪う。

//雪乃
「やぁぁっ……こ、このっ……離してっ……」

いくら抵抗したところで多勢に無勢で私にもうどうすることも出来なくなっていた。

『こ、このままじゃ……な、なんとか……何とかしないと……』

男たちの輪の中で一方的に殴られながら必死に良い案はないかと考える。
だけど集中して考えることも出来ないこんな状態では良い案など出るわけがない。

時間だけがただ無常に過ぎていく。

//雪乃
「や、やだっ……ちょっと、やめて、触らないでぇッ!!」

男たちに押さえつけられて、揉みくちゃになりあちこち引っ張られたせいで私の服が破れる。

大勢の男たちの前に私の素肌がさらされてしまう。
いきなり素肌を露出させられて、私は恥ずかしくて悲鳴を上げてしまう。

//雪乃
「やめてっ!! このぉっ、離してぇぇっ!!」

私は真後ろに立った男の人から逃げようと、反射的に相手の顔を殴りつけていた。
男は無言で何も言わずにその場へと倒れ込む。

//雪乃
「え、あ……ッ、ど、どうしよ……ぅ」

いくら慌てていたとはいえ、今すごく勢い良く殴っちゃったような、気がして。
その場で倒れてしまった相手に対し、恐怖感が襲いかかってくる。

//雪乃
「え……あ……ぅぁ……ぁ……やだ、やだやだ……こんなの、い……やぁ……」

男たちはいつの間にかさらに数を増していた。
一体いままでどこに隠れていたのかというくらいの人数が私を取り囲んでいる。
私の顔から血の気が引いていくのがわかった。

『逃げなきゃ……逃げなきゃ、逃げなきゃ……こんな、こんなの……いや、いや』

気弱になって、私の抵抗が弱まった途端、私の後頭部に衝撃が走り抜ける。
そして、男たちの群れがそれを再び合図にして私の身体へと激しく攻撃を一方的に加えてきたのだ。

//雪乃
「うぐっ……いぎっ……うぁぁっ……」

腹、頭、私の身体中おかまいなしに男たちの殴る蹴るの暴行が始まる。
着ている服は暴行を受けるたびにボロボロになっていき、その度に私の肌が男たちの前にさらされていく。
防御もほとんど意味をなさずに、私の身体にはダメージばかりが蓄積されていく。

//雪乃
「もうやだ……やだぁ……」

暴行の嵐に耐え切れずに、私の口からは弱音が漏れてしまうけれど、男たちは私の言葉などには全く耳を貸してはくれない。

『もう、やぁ……痛いのはっ……やぁぁ……』

私は涙を流しながら、再び地面へとしゃがみ込んで身体を丸める。
もう戦う気力なんてちっとも残ってなどいなかった。

早くこの時が過ぎれば良いのにと、そんなことばかり考えていた。

//雪乃
「もうやだっ……お願いだからっ……お願いだからもう止めて……」

地面に亀のように丸まりながら、私は必死にそれだけを言い続ける。
だけど男たちの攻撃は一向に止まる気配が無い。
背中に容赦なく男たちの足が降ってくる。

//雪乃
「いやぁっ……い、痛いっ……もう、やぁ……あ、謝るからっ……謝るから許してよぅ……」

もうプライドも何もなかった。
私は男たちの攻撃に耐えながら、止めて欲しいと懇願し続けることしか出来ない。

//雪乃
「ごめんなさい、ごめんなさい……お願いですから……も、もぅ……いじめないで……いじめないでくださいっ……」

ジワリと股間が湿り気を帯び、私は男達に殴る蹴るされながらオシッコを漏らし始めてしまう。
痛くて、恐くて、殴られるのも蹴られるのもイヤで。
ただただ、言葉が通じない相手にどうしたらいいのかも分からずに、全身を震わせて恐怖に怯えてしまう。

地面に突っ伏しながら許しを乞う姿はどれだけ惨めなものだろう。
だけど、いまの私にはそんなこと気にする余裕などない。

雨あられのように男たちの攻撃を受け続けながら、私はいつまでも泣きながら謝り続けていた。

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2011年08月03日

聖夜乙女雪乃 二章(4)

//雪乃
「さて、それじゃ行ってくわるわね」


//ネージュ
「うん、私もすぐに行くから気をつけて」


//雪乃
「了解」


私はネージュよりも先にモノクロームの世界へと出かけていく。

魔力を失っているネージュをいきなりモノクロームの世界へと連れて行くのは危険過ぎる。

いきなり化け物に強襲される可能性だってある。

だからここ最近は私が先に侵入してから、ネージュがやってくるのが当たり前のことになっていた。

モノクロームの世界を感知して、私は魔力の波長をモノクロームの世界に合わせていく。

そうすることによって、私の身体はいとも容易くモノクロームの世界へと入り込む。

鮮やかな色が散りばめられていた現実世界が見渡す限りの単色に変わっていく。

//雪乃
「いつ来ても、つまらない世界」


色のない世界を見て、私は思わずそんなことを呟いてしまう。

何度もこの世界で化け物と戦って慣れてしまったせいで、私はこのモノクロームの世界を観察する余裕が生まれていた。

といっても、この世界にいるのはグロテスクな触手を使って攻撃してくる化け物だけだ。

そして、そんな化け物に私は興味なんて惹かれない。

だからいつもこの世界を隅々まで探索することはなかった。

//雪乃
「さて、今日はいるのかしら……」


だけど今日は違う。

先日見かけた男性を探すという目的がある。

もしもあの男性がネージュの言っていた『夢憑き』であるというのなら、このモノクローム世界の住人だということを改めて教えられた。

化け物の他には人なんて住んでいないとばかり思っていた私にとって、ネージュの言葉はかなり衝撃的なものだった。

何よりも『夢憑き』になってしまったら、普通の生活をもう送ることは出来ないということに少なからずショックを受けてしまう。

『見間違いだったら良かったんだけどなぁ……』

ネージュからそんな風に色々な話を聞いてしまったら、そう思いたくもなってくる。

いまいち気の進まない気分で私はモノクロームの世界を探索する。

どこに行っても相変わらず人の気配なんて皆無。

私の歩く音だけが何も音の存在しない世界に響いている。

『うーん、やっぱりこの前のは気のせいだったのかな……』

何だかんだで結構歩き回り、最初は色々と警戒していた私だったが、いつの間にか警戒心を解いていた。

いつまで経っても、化け物も、ましてや『夢憑き』も現れない。

そうなると、このモノクロームの世界でやることはなくなってしまう。

『帰ろうかな……』

踵を返して、私はいま来た道を戻ろうと振り返る。

//雪乃
「えっ!?」


私が振り返ったとほぼ同時に、黒い影がビルの影へと消えていくのが見えた。

『え、いまの……見間違いじゃ、ないよね……』

影が消えた場所をマジマジと見つめていると、いきなり背後に視線を感じた。

私は慌てて振り向く。

そこには似たような影がビルの隙間に消えていくのが見えた。

全体像を捕らえることは出来なかったけれど、消えた影は化け物の大きさではなかった。

そう、言うなれば人間のような……。



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