2011年07月27日

聖夜乙女雪乃 二章(3)


その日も、私はモノクロームの世界で化け物と戦っていた。

//雪乃
「うりゃぁぁぁっ!!」


触手の攻撃をかわして化け物に接近しての一撃。

魔力を帯びた私の拳が化け物の身体深くにめり込んでいく。

身の毛もよだつような不気味な断末魔を上げながら、化け物はゆっくりと地面に倒れこむ。

//雪乃
「ふぅ、一丁上がりっと」


化け物が死んだのを確認してから、私は額の汗を拭う。

これで何匹化け物を倒しただろうか。

途中から数えるのが面倒になるくらいに、私は化け物を倒していた。

ネージュとの修行の成果もあり、ここのところは特に苦戦することもなく勝利を重ねている。

だからとって油断など出来るわけもなく、私は一応まだ化け物はいないかと辺りに気を配る。

//雪乃
「うん、近くにはもう居ないようね」


他に化け物の気配はしない。

モノクロームの世界を作り出している化け物はこれ一匹だったようだ。

化け物というこのモノクロームの世界を作り出している主が死んだのだから、もう少しで世界はまた元通りになるだろう。

私は警戒を解いて世界が元の色に戻るのを待つ。

そんな時だった。

モノクロームだった世界の隅に小さな色が存在していた。

//雪乃
「あれっ?」


不思議に思って私は視線をそちらに向ける。

//雪乃
「えっ、な、なんで……」


私の目が驚愕に見開かれる。

誰も居ないはずの世界だというのに、私の視線の先には、一人の人間男性の姿があったのだ。

もしかして、化け物に襲われた人間かもしれない。

突然化け物に襲われて運良く逃げ出せた男の人。

それが私が考えたここに男の人がいる理由だった。

『どうしよう、見ちゃったからには話しかけた方が良いのかな……』

まさかモノクロームの世界で私とネージュ以外の人間に会うとは思わなかった。

「でも、私が魔法使いだってバレると色々と面倒なことになりそうだし。
ネージュに相談した方が良いかな……」


ネージュはこんな時に限って席を外している。

さすがに私一人ではこんな時にはどうしたら良いのかわからない。

モノクロームの世界で他の人間に会った時はどうしたら良いのかなんて教わってはいないのだ。

//雪乃
「あ、あれっ?」


私がどうしよかと逡巡しているうちに、いつの間にか男性の姿はそこに無くなっていた。

『き、気のせいじゃないよね?』

男性の姿を探して、私はキョロキョロと辺りを見渡す。

だけどそこにはもう男性の姿はなかった。

まるで煙のようにふっと綺麗さっぱり男性は消えていた。

//雪乃
「…………」


このまま帰るのもはばかられた私は少しだけ辺りを探索してみるけれど、男性は見つからなかった。

『う〜ん、白昼夢でも見たのかしら……』

ここ最近は特訓とか化け物との戦闘とかで疲れもたまってる。

さらに昼間は学校にも通っている。

疲れがたまってないと言えば嘘になる。

だから幻影を見てしまうというのもわからないでもないけれど。

『だけど、その割にははっきりと見ちゃったしなぁ……』

あれは現実だったのか幻影だったのか私にはいまいち判断が出来ない。

でも、探してもいないということは何かの見間違えだったのだろう。

『うん、そうしよう。
そうに違いない』

本当に居たのかどうかもわからない。

それに、化け物と戦って疲れていた私は捜索も早々に打ち上げる。

一応、現実の世界に帰ったらネージュに聞いてみよう。

私はそう結論付けて、現実の世界へと帰還していった。

次の日、学校終わりにいつものようにネージュと特訓していた私はふと昨日のことを思い出してネージュに聞いてみた。

//雪乃
「そういえば昨日、あの世界に男性が居たような気がするのよね」


//ネージュ
「ええっ!! それ本当?」


私の質問にネージュは大げさと言って良いくらいに驚いた。

その様子に私も驚いてしまう。

//雪乃
「な、なによそんなに驚いちゃって」


//ネージュ
「ご、ごめんなさい。
でも、それって間違いないの?」


//雪乃
「わ、わかんない。
すぐに消えちゃったし見間違いだったのかも……」


私がそう答えると、ネージュは難しい顔をして何やら考えているようだった。

時々私の耳にブツブツ言っているネージュの独り言が聞こえる。

いてもたってもいられなくなり、私はネージュに詰め寄る。

何か知っているのなら、それを私にも教えて欲しかった。

//雪乃
「なにか心当たりがあるのなら教えてよね」


//ネージュ
「う、うん……。
ええとね、もしかしたらあなたが会ったのは『夢憑き』というモノかも知れない」


ネージュの口から『夢憑き』という聞きなれない単語が漏れる。

その口ぶりから察するに、あまり良い意味の言葉ではないようだった。

そう思いながら、私はネージュの説明に耳を傾ける。

私が大人しく聞く体制に入ったせいか、ネージュは息を一つ吐いて言葉を続ける。

その目つきはとても真剣なものだったので、私は思わずその場で身を正してしまう。

//ネージュ
「『夢憑き』というのは、なんていうか……そう、突然変異みたいなモノなの」


言葉を整理しているのか、ネージュは少し考えてから言葉を続ける。

//ネージュ
「男性は本来、耐性が無いからモノクロームの世界では自由に動く事ができないの。
身動きすら出来ないはずなの。
だけど、どうしてだかはわからないけれど『夢憑き』にやられた相手は動き回る事が出来るの」


//雪乃
「へ、へぇ……」


当然のことながら、それは私が始めて聞くことだった。

驚いている私を尻目にネージュはさらに言葉を続けていく。

//ネージュ
「ただ、本来の適性を持ち合わせている訳では無いので、魔力を使い戦うような真似は出来ない」


//雪乃
「な、なるほど……魔力を使ってはこないけれど、戦いは避けられないのね……」


いくら魔力を使わないといっても、人間と戦わなければならないという事実に思わず冷や汗が出てしまう。

化け物となら戦えるけれど、人間相手だとどうだろうと、私はそんなことを考えてしまう。

何も実害がなければ逃げる選択肢もアリかもしれない。

私は一人そんなことを思う。

だけど、続けて出たネージュの言葉は想像を絶するものだった。

//ネージュ
「『夢憑き』は化け物の影響を多大に受けているために、私たちを孕ませようと襲いかかってくる事もあるの」


//雪乃
「えええ〜」


ネージュの言葉に身震いしながら声を上げてしまう。

『夢憑き』とかいうモノが私たちを犯そうと襲い掛かってくるのなら戦いは避けられない。

元は人間なのに、私に戦えるのだろうか。

難しい顔をして考え込んでいる私を見て、ネージュも思案顔になってしまう。

私の葛藤を感じたのだろう。

二人ともそのまま言葉もなく固まってしまっていた。

私の勝手な意見だけど、ネージュにとっても『夢憑き』というのはレアな存在だったのだろう。

だから私に余計な心配をかけまいとして、その存在を教えなかったのではないだろうか。

私が『夢憑き』の存在を知ってしまったら、今みたいに考え込んでしまうことがわかっていたから。

ネージュのそんな優しさに、事態は困ったことになっているけれど、私は不謹慎にも嬉しいなと思ってしまった。

//雪乃
「ふふっ」


思わず私の口から笑みが漏れてしまう。

//ネージュ
「ど、どうしたの突然?」


//雪乃
「ううん、なんでもない」


私が笑ったせいで、思いもよらずに場の空気が少しだけ軽いものになった。

ネージュもどこか気の抜けた顔をして微笑んでいる。

何度も二人で化け物と戦ってきたせいで、知らないうちに私たちは少しだけ強くなっているようだった。

とはいっても、私たちにはモノクロームの世界で見た男性が本当に『夢憑き』かどうかなんてわからない。

私は『夢憑き』なんて存在をたったいま聞いたばかりだし、ネージュはその場にはいなかったのだから。

//雪乃
「まぁ、ここでこうやって考えてても仕方ないか」


私の言葉にネージュも神妙な顔をして頷く。

気にならないといったら嘘になるけれど、真実を知るにはまだまだ情報が足りない。

//ネージュ
「でも、『夢憑き』かも知れない男性がいるかも知れないということは、きちんと心に留めて注意してね」


//雪乃
「わかってる」


ネージュの言葉に、私も真剣な面持ちで頷いた。

見上げた空は青く澄み渡っていたのに、私たちの心の中は言い知れぬ不安に曇っていた。
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2011年07月20日

聖夜乙女雪乃 二章(2)


//雪乃
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!? え、あ……今のは……ゆ……め……?」


 夜中、不意に目が覚める。
 どんな夢を見ていたのかはハッキリと覚えていないのだけれど、全身にびっしょりと汗をかいている。


 股間の奥が熱く、未だに何かが挿入されているような違和感があった。
 確かめるのは恥ずかしいと思いながらも、服の上から指を股間へとあてがっていく。


 ぐにっ


 化け物によってこじあけられた私の膣口は、柔らかく指先で容易に変形する。
 指先に伝わる感触は、凌辱によって肉ヒダが少し形を変えられてしまった事実を改めて認識させてくる。


 そして、何かが挿入されているような違和感は、気のせいだった。
 布越しに指先に何かが触れるような事も無い。


 何か、が挿入されている感覚。
 それは間違いなく指先よりも太い物であったような、あの時に私の股間を蹂躙した太さがあるはずだったが。
 今はその感覚が完全に消失している。


//雪乃
「私のおまんこ……完全に、壊されちゃったのかなぁ……」


 過去にあった出来事は、私の中に小さなトゲとなって心に刺さり、それは時々私の気持ちを不安にさせてくる。
 それと同じようにして、自分の股間を蹂躙した化け物による凌辱は、すっかりとイヤな記憶として私の中に刻み込まれている事を痛感した。


 とりあえず今は全身にまとわりついている汗を洗い流そうと、服を脱ぐ。


//雪乃
「酷い身体ね……」


 鏡に映った自分の身体は、凹凸の少ない……正直、胸は小さいを通り越して薄い。
 それでいて、股間の部分だけは以前と違い、秘肉が歪になってはみ出ている。


 数日前から理解している事なのに、事あるたびに私は自分の股間を気にしては、それが歪んでいる事を確認してしまう。
 そして確認するたびに改めて思ってしまうのだ、自分は化け物に純潔を奪われてしまった女性なのだと。


 ひとしきり自分の身体を眺めてから、ため息をつく。


 どうせ変える事の出来ない過去だから、早く忘れてしまいたいのだけれど……。





 化け物と戦いながらの特訓の日々が続く。

 実践に勝る修行はないと言われるけれど、確かにそれはその通りだと思った。
 死と隣り合わせの緊張感の中で化け物と戦っていると、嫌でも真剣になり集中力も練習とは違い高まっていく。


 この日もそうだった。
 モノクロームの世界の中で、私はネージュに見守られながら化け物と戦っている。


//雪乃
「うわっとっ!!」


 目の前に迫ってくる触手をかわす。
 触手は私の身体をかすめて、アスファルトの地面に大きな穴を開ける。


//雪乃
「うぁぁ、あんなの喰らったらひとたまりもない……ッ」


 化け物の放つ触手の破壊力を見て、私の背筋に冷たいものが流れる。
 今度の敵はなかなかレベルが高そうだった。
 それがネージュにもわかるのか、彼女は心配そうな視線を私に向ける。


『でも、大丈夫。当たらなければ……どうにでも……なる!』


 ただ、相手の攻撃を目で追う事が出来る。
 どのように動くかを判断しながら身体を動かして、十分に回避可能だ。


 どれだけ相手が破壊力を持っていたとしても。
 それが当たらない限り、私が負ける事は無いのだから……。
 私が襲われる事にもならないッ!


『集中、集中……』


 もちろん、その間も魔力を拳に集中させていくのも忘れない。
 ここのところの特訓のおかげで、私はスムーズに魔力を移動させることが出来るようになっていた。


 自分の身体の中で血液のように流れている魔力を一箇所に集めるべく集中する。
 集中して意識することで、私は体内に存在している魔力をズラして一箇所に集めていく。
 体内の魔力が凝縮されて私の拳に収束していく。
 今まで以上の魔力の充填を感じ、私の拳が熱い位の熱を持つ。


『これ、すごい……』


 自分自身が集めた魔力量に思わず自分で驚いてしまう。
 それくらいに私の集めた魔力量は今までとは違っていた。
 化け物にもそれがわかったのだろうか、私へとたくさんの触手を放ってくる。


 一撃でも喰らったら悶絶してしまいそうな化け物の攻撃だけど、集中している私には触手の動きが全て見えていた。
 迫ってくる触手を紙一重でかわしながら、私は化け物へと一歩一歩近づいていく。
 そしてついに、化け物は私の手の届く範囲に入り、私は拳をグッときつく握りしめ、腕を振りかぶる。


//雪乃
「うりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 化け物の最後の攻撃をかわし、私は魔力を帯びた拳を叫び声と共に化け物へと叩きつける。
 聞くに堪えない化け物の断末魔が辺りに響く。
 私の拳は、化け物の身体に深々と突き刺さっていた。


//雪乃
「ふぅ……」


 化け物を倒したことを確認して、私はその場で大きく息を吐く。
 化け物が死んで安全だと確信したのか、ネージュがすぐに私の側へと駆け寄ってくる。


//ネージュ
「お疲れ」


//雪乃
「うん」


 私たちは、二人で倒したばかりの化け物を見下ろす。
 化け物はピクリとも動かない。


//ネージュ
「だいぶ強くなったよね」


//雪乃
「そう……なのかな……」


 だいぶ、と言われてもまだ自分ではよくわからない。
 確かに以前よりはちょっと魔力を制御出来るようになってきたとは思うけど。


 ネージュに褒められて、私は照れ笑いを浮かべてしまう。
 あまり褒められることに慣れていない私のとっては、ネージュの言葉は、私の心にじんわりとした暖かさを与えてくれる。
 ただ単純に、それがとても嬉しい。


 いくら時間が経ったところで、まだ化け物と戦う事や犯されるかも知れないという恐怖は消えない。
 だけど、誰かに必要とされ、誰かの為に何かをするということはとても達成感のあるものだ。


 化け物と戦う恐怖や犯される恐怖、そして変形してしまった自分の性器を感じる度に思い出される恥辱の記憶。
 そういった負の感情は、褒められるという事で相殺されていく。


『負けなければいい』


 負けなければ犯されることもない。
 それに、ネージュの期待にも応えられる。


//ネージュ
「どうしたの?」


//雪乃
「ううん、なんでもない。それより、私はもっともっと強くなるから」


//ネージュ
「えっ?」


//雪乃
「もっともっと強くなって、化け物なんかに絶対に負けないようになるから」


 ネージュの目を見てはっきりと宣言する。
 私の突然の言葉にネージュは驚いたようだったけれど、私の視線が真剣だというのがわかったのだろう。
 ネージュは少しだけ微笑んで、それから力強く頷いたのだった。

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2011年07月13日

聖夜乙女雪乃 二章(1)



//ネージュ
「そう言えば、おかしな話ね。幾度も助けてもらったのに、あなたの名前をまだ知らなかったなんて」


//雪乃
「私も、名前知らなかった……ね」


 お互いに手を伸ばし、握りあって。
 名前を伝え合った日。
 それは私の中で忘れられない瞬間となり、心に記憶として刻まれた。


 自分が誰かを助ける事が出来る……自分の中に、何かが出来るという事実がある。
 それが何よりも、単純に嬉しくて、嬉しくて、たまらない。


 そんな日を経て、私はサンタ少女……ネージュと名乗った彼女と、一緒に過ごす時間が増えるようになっていった。
 何の因果かわからないけれど、魔力というのをこの身体に宿してしまった自分。
 それは自分のからっぽだった心の真ん中に、素敵な熱を灯しているようだった。


//ネージュ
「上手く魔力が溜まってないみたいだね、雪乃。もうちょっとイメージを頭の中に浮かべてみるといいんじゃないかしら」


//雪乃
「え、う、うん。えっと……イメージ、って?」


//ネージュ
「しっかりと魔力を集めたい場所に『ここに溜めるぞー』って魔力を圧縮するイメージを持つ感じ。この場所に溜めようって思考を持つ事かしらね」


//雪乃
「圧縮するイメージ……圧縮、圧縮……押し潰して、まとめ上げていくような……」


ネージュに言われた圧縮するイメージを描くように、私は集中してみる。
身体の中ではまるで血液が流れるかのように、魔力が身体中を循環している。
そんな不思議な流れが存在していた。


腕に力を込めようとすれば、その魔力は一箇所へと流れていくのだが、それを上手く溜める事が出来ない。
そこで、さっき言われた圧縮するというイメージを頭の中に描いてみる。


拳がじんわりと温かくから熱くへと変化していき、私の拳に魔力が集中していくのがわかる。
横目でチラリとサンタ少女を見ると、彼女はウンウンと頷いていた。


//ネージュ
「おっけーい!」


 その言葉に私もうなずいて、腕に魔力を溜めていた状態から集中を解く。
 再び魔力の溜めが無くなると自然と魔力は再び身体の中を循環するように、元の流れになっていった。


 先日に現れた化け物と安全に戦う為、なんて言い方は変かもしれないけど。
 魔法少女として、魔力の使い方を学ぶ事によって、リスクを減少させていく事が出来るようになる。


 自分で言うのも何だけど、こうやって色々と教えてもらっているうちに、私は何となくだけど魔力の使い方というものに慣れてきているような気がする。
 この力をもっと上手く使いこなすには、魔力について私がもっともっと理解する必要があるだろう。


 とはいえ、私の住む世界には魔力についての参考書なんていうものは存在しない。
 中世の人たちが研究していた錬金術とは訳が違うし、そんな本がもし手元にあったところで何の役にも立たないであろうことは私でもわかる。


 でもそんな、学校などで学ぶ事が決してない知識。
 それを自分が理解して、体得し、徐々に自分の力として蓄えていく事が実感を伴っている状態。
 不謹慎かもしれないけれど、それは何だか心地良くすら感じられた。


//ネージュ
「さてと、今度は魔力を広く集めるというやり方をしてみようかしらね」


//雪乃
「広く、集める? ごめんなさい、何だかよく分からないんだけど」


//ネージュ
「傘ってあるじゃない、雨の日や雪の日に身体を守る為の道具。あんな感じに、魔力を使って身体を守ろうって方法……そうね、傘を作るって考えてもらえるとイメージがしやすいのかもしれない」


//雪乃
「傘を……作る?」


 言われるままに頭の中でイメージをしてみる。
 傘の具体的な形はわかっているから、それを魔力でそれっぽい形を作り上げていくという事になるのだろうけど。


 拳みたいに一箇所に集中させるのと違って、流れが上手く整える事が出来ない。
 今まで何度か使った事のある拳に魔力を集中させるのとは違い、傘という一つの形を作り出していくという事。
 それは今までとまったく違う出来事だった。


//雪乃
「あれっ、なかなか……うまく……」


 なかなかコツが掴めないうちに、私の集中力が切れて、魔力は粉々に体内で分散していってしまう。


//ネージュ
「はい残念でした、もう一度最初からやりなおしかなー」


 魔力の形成に失敗した私を見ながら、ネージュはそんな言葉を口にして微笑む。
私は再び集中して、体内に散らばった魔力を集めていく。
 血液のように体内をくまなく流れている魔力を意識して、一箇所にかき集めていく。


『集中……集中……』


 さっと同じように、魔力が充填されていき、私の拳が熱を帯びてくる。


『拳だと、慣れてるから簡単なんだけどなぁ……』


 集中を切らさずに、私は拳に集まった魔力を傘の形へと変形していくイメージを頭に描いていく。

『集中して……ゆっくり……』


 拳にたまっていた熱がゆっくりと動き出し、手のひらからゆっくりとそれが身体の外側へと抜けていき……。


//雪乃
「あ、れ……?」


 身体から離れた魔力はそのまま、空気の中に拡散していく。
 ドライアイスが溶けるように、私の魔力は形にならずに、ただ散っていくばかりだ。


//ネージュ
「中々上手くいかないって所かしらね。まあ、身体の外側に魔力を出していくというのは一朝一夕で出来るような物じゃないから、慌てずに行きましょうか」


//雪乃
「うん、そうだね。わかりました」


 どうやら今日はここまでという事なんだろう。
 うなずいて私は魔力の集中をやめて、全身をリラックスさせる。
 変身していた状態から、普段通りの自分の姿へと戻った。


 魔法少女になってからまだ一ヶ月も経過していないのに。ずっと昔から、こんな生活を送っていたんじゃないだろうか。
 そんな気がするぐらい、私の日々は充実していた。

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