2010年08月25日

聖夜乙女雪乃 序章(4)

//雪乃
「んっ……んー……んふぅぅ……ぅぅ……うにゅぅ……」

 外から小鳥のさえずりが聞こえる。
 カーテンの隙間からは、太陽の光が私の部屋へと入り込み、薄暗い部屋にほのかな暖かさを運んできた。
 柔らかい光がまぶたの向こうで揺らめく中、眠りの中から私の意識は徐々に覚醒へと向かっていく。
 まだ、少しだけ寝足りない気持ちはある……だからといって、もう一度寝たのでは学校に間に合わなくなってしまう。
 私はしばらくの間、布団の中をモゾモゾと転がる。

//雪乃
「何だか、変な感じよね……」

 頭の中に先日の出来事が蘇ってくる、化け物に襲われた日の出来事。
 アレが夢ではなかったという事は、私の身体にちょこちょことある擦り傷や、引っ掻き傷が物語っている。
 傷を触ると、あの時の恐怖が脳裏をよぎり私は思わず唇を軽く噛んでしまう。

//雪乃
『出来ればもうあんな目には会いたくない……』

 そう思うのは誰だって当然だろう。
 だけど、私はサンタ少女の代わりに化け物と戦うことを自分で決めた。
 化け物に襲われた私を助ける為に戦って、化け物に犯されて泣き叫んでいた。そんな危険を顧みず、私なんかを助けてくれたんだから。
 その気持ちを裏切るような事は、出来ない。

 ただ、恐いという気持ちをすべて強引に押さえつける事は出来ない。
 私はの胸は不安で張り裂けそうなぐらい、苦しさもある。
 一歩間違うと、私だってサンタ少女みたいなことになってしまうかもしれないのだ。
 化け物に犯されるというのは、思いつく限りの中で一番最悪なことだと思う。
 そうならない為に私に出来ることは、この力のことなど忘れる……事なんだと、頭では理解出来ている。

//雪乃
「はぁぅ……ッ」

 恐怖と、救い。
 二つの糸が私の中で複雑にからみあっては、ぐるぐると思考がうねりをあげていく。
 サンタ少女が自らを犠牲にして私を助けてくれたから。
 だから戦う事に関して、その恩を返すという気持ちで歯を食いしばる事は出来る。
 世界のはじっこで、自分なんて生きている意味が無くて、いつ消えてしまっても構わないと思っていた所で。
 化け物に襲われて……助けなんて無いと思っていたのに。
 そんな私を救ってくれたという事が、私の灰色だった世界に鮮やかな色を取り戻してくれたように思えたから。

 ピピピッ!
  ピピピピピッ!

//雪乃
「ひゃうッ!?」

 おもむろに鳴り出した目覚まし時計。
 その音で私の思考が強引に寸断されて、現実へと引き戻される。
 私の内側に、納得するような答えが導き出されるなんて事は無いのかもしれない。
 この恐怖感はそう簡単にぬぐい取れるような代物じゃないのだろう。
 だったら……今は、今できる事をするしかない。

 そう思い、私はベッドから起き上がって着替え始めた。
 準備を整えて食卓に座り、私はテレビを観ながら朝食を開始する。
 当たり前のことなのかもしれなかったけれど、やっぱり昨日の出来事はニュースになどなっていなかった。
 まぁ、ニュースになどなっていたら私はここでこうしてのん気に朝食などとってはいられなかっただろうけど……。

//雪乃
「…………ッ」

 自分だけなのか?
 それとも、あれは頻発している出来事なのか?
 手伝うと言ったけど、アレは本当に自分がどうにか出来るような事なのか?
 たくさんの疑問、不安が、さらに膨れあがってくる。
 そんな感情が膨れだしたら、急に胸の奥が締め付けられるような、不安定な気持ちに襲われてしまう。

//母親
「大丈夫?」

 そんな心配されるような声がかかり、私はハッとする。
 もし、ここで心配されて……昨日の出来事を聞かれたら、上手く答えられる自信なんて物が無い。
 あんな化け物に遭遇しました、しかも世界がモノクロームなんです。
 そんな説明をどうしたらいいのかわからない。
 だから、今は軽く首を振って、母親の顔を見る。

//雪乃
「ううん、大丈夫。少し早く目が覚めちゃって、眠気が少し来ただけだから」

//母親
「そう? 居眠りなんてしちゃダメよ」

//雪乃
「はい、わかりました」

 母親に心配させない為にもしっかりと返事をして、朝食の残りを胃に入れていく。
 本当に居眠りだけはしないように、気をつけようと改めて思った。





 ――学校へと登校し、私はいつものように授業を受ける。
 真面目に授業を受けているつもりだったけれど、頭にはちっとも授業の内容は入ってこない。
 それもそうだろう。
 突然の非日常に巻き込まれて、普通に授業など受けられるわけがない。
 頭のどこかに昨日の化け物がチラついては、自分の思考がモノトーンの世界を考え込んでしまう。
 もしかしたら、まだ、私の心はあの異常な世界に捕らわれたままなのかもしれない、そんな気さえした。

//雪乃
『誰かに言ったところで、信じてもらえるとは思えないしね……』

 深海に生息している生物よりも癖の強い、化け物じみたフォルム。地上せ生息するには適していないような生き物。
 それが闊歩して、女性を犯そうと行動してくる。
 どう考えても異常で、非常識な、歪んだ意志に満ち満ちている世界。
 他人に説明してみても、理解されそうには思えなかった。

 くるりと、シャープペンシルを指で回しながら苦笑する。
 よくよく考えてみれば、誰かに相談しようにも私には友達と呼べる相手がいない。
 どんなに不安でも、結局は自分で抱え込むしかないのだ。
 今までだってそうやって生きてきたし、これからもそうなんだろう。
 一人には慣れている。
 慣れているからこそ、私を助けてくれたあの少女の事が気になるんだ。

 あの少女は、あんな化け物と戦っている。
 戦い続けている日々を過ごしている、それも私の知らない日常の裏で。
 自分の事を犯そうと、実際に犯してくるような、規格外の生物と灰色の世界で戦い続けているんだ。
 そんな、孤独な世界で生きている彼女。

//雪乃
『強いわよね……』

 彼女の事を思い、そんな言葉が思わず口からこぼれていた。
 いつか、自分にもそういった強さが、見知らぬ誰かに手をさしのべて、助けられる強さを作り出す事が出来るだろうか?
 そんなささやかな希望と疑問が入り混じった思考をぐるぐると回転させているうちに、授業の時間は終わりを迎えていた。
 結局、私は早退することもなく最後まで授業を受け続けたのだった。
 帰りのホームルームも終わり、私はゆっくりと席を立つ。
 自分の鞄を持ち、出口へと向かう。
 その間も、友人など誰一人いない自分には話しかけてくるものなど誰もいなかった。
 いつものことだということもあり、私は特に気にする素振りもなくさっさと自分の教室から出て行く。
 その時だった。

//雪乃
「…………ッ!?」

 不意に私の周りの景色がモノクロになっていく。
 そして、先ほどまでざわついていたのが嘘のように学校中が静まり返った。
 たくさんいたはずの、学校にいる人達の姿がすべて完全にかき消えてしまっている。それは先日に体験した現象が、また同じように再現されていた。

 そして私も、先日にした事を思い出す。
 身体の奥が熱くなる、そんな熱が自分の身体の内側に存在している、その独特の感覚のスイッチを入れる。
 ただの熱じゃない、もっと大きな不可視の力。

//雪乃
「……あ……つぃ……ッ、ふぁっ、あ……あぁぁ……?」

 身体が、全身がその熱を帯びていく。
 先日に私が無我夢中でいた時と違って、私は自分の身体中に熱が回っていくのを感じ取る事が出来た。
 手の先、足の先、自分の頭、髪の毛の先端まで。
 全身の細胞が造り替えられていくような、そんな何かを連想させる感覚。
 その熱に全身がすっかりと満たされていった所で、不意に少しだけおかしな感覚に襲われてしまう。

change.jpg

//雪乃
「う……そぉ……?」

 不意に、近くにある窓に映り込んだ姿。
 それは私でありながら、今の私じゃない……。
 そんな不思議な姿を見て、私は思わず息を飲んでしまっていた……。
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2010年08月19日

聖夜乙女雪乃 序章(3)


クスクス……
 クスクス……

 私を遠巻きにしながら、他の女子たちがコソコソと話をしている。
 気にしないようにしていると、女子たちは時折こちらを見て、小さく笑い声を漏らしていた。
 嫌な笑い声が私の耳にまとわりつく。
 笑い声のする方を見ると、私が視線を向けた途端に女子たちは視線を逸らす。

//雪乃
「……あ……ぅ…………ッ」

 どうしてだろう?
 反論しようという言葉を口にする気も出来ないまま、私の声はその場で詰まる。
 どうして私を見て笑い声を上げたりするんだろうか?
 誰も私の声には答えない。
 私も誰にどう話しかけたらいいのか、わからない。
 ただ教室はいつもさざ波のように、女子たちの笑い声が延々と満ちて、繰り返されていっては、私の事を責め立ててくる。
 ここにいるのが辛い……。

//雪乃
「………………ぁ……ぅ…………」

 何をどう口にしたらいいのかわからない。
 やり場のない気持ちだけを抱え込んだまま、私は思わず椅子の上でうずくまりたいような感覚に襲われる。
 ただ、ここにこうしているだけで苦痛だ。
 身体中に小さな針が刺さるように、コソコソとした話し声が聞こえてくる。
 その中身までは聞き取る事は出来ないけど……。
 ただ、いたたまれなくて、私は席から立ち上がる。
 そして私は自分の教室から出て行く。

 ここは、私のいていい場所じゃない……。

 とりあえず逃げるように、私は図書室へと向かった。
 そんな私の背中に女子たちの『ムカつく』とか『死ねばいいのに』なんて言葉がグサグサと刺さってくる。
 わざわざ私に聞こえるように言っているのは明白だ。

//雪乃
「どう……して、私、何も悪い事して……ない……」

 女子たちの悪口が早く聞こえなくなるように、私は足早にその場から去っていく。
 冷静を装っていたけれど、彼女たちの言った悪口は私の胸に深く突き刺さっていた。
 そして、図書室に辿り着く。
 図書室の椅子に座りながら、私は何故こんな風になってしまったのかとそればかりを考えていた。
 形だけ小説を開いてながらも、その文章はまったく自分の中に入ってこない。

//雪乃
「ま……さか……?」

 ふと、思い当たる事がある。
 つい先日……私がクラスのリレーで一位を取った。
 あの時に、クラスの中でいつも足が速い足が速いと言われていた、聖子ちゃんに勝ってしまったけど。
 考えてみれば、その頃から私はクラスの女子たちの中で浮いた存在になっていったような気がする。
 私はただ一生懸命やっただけだったのに……。
 それなのに何故、私はクラスで浮いた存在にならなければならなかったのだろう。

 一生懸命やったことが気に食わなかったのだろうか?
 それとも他に何か理由でもあったのだろうか?

 ただ、それを考えても答えが出るような事は無い。

 現実はとてもシビアで、私の気持ちなんてお構いなしに、クラスで浮いた存在になっていた私は、恰好のイジメの対象になってしまっていた。
 無視される、上履きを隠されるのは当たり前で、気がついたら私はいつも一人になっていた。

 よくわかんない。
 何をしたらいいのかわかんない。
 ただ、学校に行っても辛い事ばかりで。
 何をしたらいいのか、どうすれば今を抜け出せるのか。

 だって、自分から話しかけても無視される。
 なのに皆は私を取り巻いて、ただ笑ってばかりいる。
 私が……泣いている姿を見て、笑っているのだ。
 それをどうしたらいいんだろう?
 きっかけも何もなく、助けてくれるような人もいなくて。

//雪乃
「ぅ……ぁぁぅ……」

 いつもいつも、泣いていた。
 泣いてばかりいた。
 何もしていないのに、涙だけが溢れて止まらなくて。
 そして私は、学校に通うのを……辞めた。
 両親は共働きだったから、ずっと家の中にいて、何もする事が無かったから、教科書を幾度となく読み返した。
 テレビを付けると、その音で私が家にいるって誰かにバレてしまいそうな気がして。
 家にある色々な本を読んで、教科書を読んで勝手に勉強して……。
 でも、それはそれで幸せだった。
 誰も私の事をイジメないから。
 学校なんて行かなくても構わない、ただこうしているだけで、私は生きている。
 すごくすごく、それが幸せで、それだけで良かったんだって思った。

 でも、幸せもそんなに長くは続かなかった。
 一週間だろうか? 二週間だろうか?
 日付を数える必要が無いぐらい、穏やかで不変な時間流れていた時、私のお母さんが家に戻ってきた。

//雪乃
「ど、して……? 今、おしごと……じゃ……?」

 母親と一緒に現れた、担任の教師。
 私がイジメられていた時、担任は知っていたにもかかわらず何もしてはくれなかった、最低の人間。
 ただ、そこからの事はボンヤリとしか覚えていない。
 担任が何を話したのか、どんな事を伝えようとしていたのか、そういった事なんてほとんど覚えてはいない。
 ただ……担任はというと、形だけの励ましと私に対するフォローを約束して、これで自分の役目は終わりとばかりにさっさと帰っていった。
 それだけは覚えている。

//母親
「大丈夫よ、雪乃ちゃん。先生だって、いじめはありませんって。そういう教室にするって約束してくれたから」

 そんな言葉、担任の口から出ていただろうか?
 私の頭にそんな疑問が浮かぶぐらいに、担任は冷淡で、他人の事を心配しているそぶりなんて見せたようには思えなかった。
 ただ、私は再び学校に行かなければいけない、そういう事になっていた。

 その夜、私は明日など来なければ良いのにと思いながら布団に入った。
 だけどなかなか眠れない。
 不安で眠れる訳がなかった。
 布団の中でモゾモゾとしているうちに、外が明るくなってくる。
 結局私は、一睡もすることなく朝を向かえた。

//母親
「大丈夫よ、雪乃ちゃん。ママが学校まで一緒に行ってあげるから」

 ……逃げる事は、出来なかった。
 ずっと母親が隣にいる状況で、陰鬱とした気分を抱えながら通学路を歩く。
 お腹がグルグル鳴る、頭がずっとズキズキと痛んで、全身が悲鳴をあげている。
 思わず幾度かうずくまって、痛みを訴える……。
 でも、母親はそんな私の身体を抱き留めて、強引に学校へと引っ張っていく。
 やがて私は校門をくぐり、校舎へと入るように念押しされた。

//雪乃
「………………」

 私は自分のクラスの下駄箱の前で停止してしまう。
 もし上履きが入っていなかったらどうしよう?
 下駄箱を開けるのが怖い。
 だけど開けなければ前には進めない。

 私は意を決して下駄箱を開ける。
 そこには、私の上履きちゃんと入っていた。
 特に悪戯をされた形跡もない。
 私はほっとして、自分の靴を脱いで上履きを履く。
 もしかしたら、私が休んでいる間に担任が話をしてくれてイジメはなくなっているのかもしれない。
 そんな淡い期待をしてしまう。

 ……いま思えば、たったこれだけのことで浮かれている自分がバカみたいだった。

 だけど当時の私にそんなことはわからない。
 来たときとはうって変わって、私は少しだけ軽い足取りで自分の教室へと向かっていった。
 自分の教室の前までたどり着くと、私はそっと教室の扉を開けた。

//雪乃
「お、おはよう……」

 教室の扉を開けた途端、クラス中の視線が私に集中する。
 何ともいえない視線が私に絡みつき、そしてすぐに、その視線は私から逸れる。
 クラス中が変な雰囲気だった。
 やっぱり私はここに来てはいけなかったのだろうか?
 そんな重い気持ちになってしまう。

//雪乃
「う……」

 だけど、ここまで来て逃げ出すわけにはいかない。
 私は仕方なく、重い足取りで自分の席へと向かっていった。
 その間も、私の身体中にはクラスメートの視線が突き刺さっている。
 本当にもう、勘弁して欲しかった。

//雪乃
「あっ……」

 自分の机の惨状を見てしまい、私の動きが止まってしまう。
 私の机の上には死んだ人にそうするように花瓶が置かれていた。
 しかも、ご丁寧に机には落書きまでしてある。
 その内容はとても正視に堪えないものばかりだった。

//雪乃
「うぁっ、あ、あ、あああぁーーーーーーーーーーッ!?」

 私はそのまま弾かれるように教室を飛び出し、その場から逃げるようにして全力で走り出していた。
 どこへ?
 どうしたのか?
 自分の記憶なのに、そこですっかりと私の記憶は途切れてしまう。

 ただ次に気付いた時、私は自分の部屋で目が覚めて――

//雪乃
「うっ……ううん……」

 私の意識がゆっくりと覚醒していく。
 薄ぼんやりとした視界の中に、私を助けてくれたサンタ姿の少女が見える。
 私が目を覚ましたのを見て、サンタ少女の表情がほっとしたものに変わった。
 そして、同時に。
 世界に色が戻っている事実を把握して、私は日常に戻ってきたという事を改めて自覚する事が出来た。

//サンタ少女
「よ、良かったぁ……。このまま目覚めなかったらどうしようかと思った」

 そんな失礼なことを言いながら、彼女は私の様子を心配そうに見つめている。
 ちょっと気恥ずかしくなってしまった私は、何事もなかったかのように立ち上がる。
 少し身体がふらふらするけれど、立ち上がれない程ではなかった。

//サンタ少女
「あ、もうちょっと寝ていた方が……」

//雪乃
「だ、だいじょうぶ……ッ」

 サンタ少女が心配そうに近づいてくるが、私は思わず手でそれを制する。
 ちょっと悲しそうな表情を浮かべられてしまうが、好意に慣れていない私には恥ずかしい。

 こ、こんな時はどういう顔をして良いのかわからないし……。

 サンタ少女はそんな私の気持ちとか気にする様子もなく、心配そうな顔をして私に話しかけてくる。

//サンタ少女
「ご、ごめんなさい……」

 助けてもらったのはこっちの方だと言うのに、突然謝罪をされてしまい私は驚いてしまう。
 驚く私を尻目にサンタ少女はずっと謝り続けている。

//雪乃
「な、何をそんなに謝っているのよ……」

//サンタ少女
「えっ?」

//雪乃
「だから、なんであなたが私に謝るの……かしら……?」

 サンタ少女の真意がなんだかよくわからない私は思わず聞き返してしまっていた。
 私の言葉にサンタ少女がキョトンとする。
 だけどすぐに神妙な顔をして、サンタ少女は私に語りかけてくる。

//サンタ少女
「それは、その、巻き込んじゃった……から……」

 彼女の謝罪の理由がやっとわかった。
 だけど化け物に犯されてしまったのはサンタ少女だってそうだ。
 それに、彼女が助けに来てくれたおかげで私が助かったのはまぎれもない事実だ。
 だからそんなに謝ることなんてないはずなのに。
 私の胸がチクリと痛む。

//雪乃
「そんなに謝る必要なんてないわよ……」

//サンタ少女
「えっ?」

//雪乃
「私はあなたのおかげで助かったんだし、お礼をするのはむしろこっちの方よ……」

 恥ずかしいので、目線を合わさずにそれだけを告げる。
 誰かにお礼を口にするなんて、何年ぶりの事なんだろうか?
 そんなささいな言葉のやりとりも、私はずっとずっと昔に切り捨ててしまった出来事のように思える。

//サンタ少女
「え、でも……」

サンタ少女が何故だかわからないが恐縮している。

//雪乃
「いいから。助かったのは私の方なんだし、お礼くらいは言わせなさいよ」

 私がいくらそう言っても、サンタ少女は恐縮するばかりだ。
 そんなやりとりを何度か繰り返していくうちに、不意にサンタ少女の衣装が透明になっていく。

//雪乃
「な、なにそれ、どうして服が……消える、の?」

//サンタ少女
「…………」

 私が驚いている中、サンタ少女の衣装は跡形もなく消え失せてしまった。
 そして今までとはまったく違った姿格好へと変化する。
 後には呆然としている私と、どこかそれを知っていたかのような表情のサンタ少女が残される。

//雪乃
「な、なによこれ? 一体どうなって……も、しかして……?」

 心当たりはあった。
 サンタ少女が手にしていた武器を持った途端、私の中で何か光が弾けるような感触に襲われた。
 それがもしも、彼女が有していた純粋性を損ねてしまう……他人に武器を触らせてはいけないという、制約を破ってしまう物だったとしたならば。
 彼女の力を失わせてしまう理由になってしまうかも、しれなくて……。

//サンタ少女
「うん、その……もしかして、かな……」

 私の言葉に、サンタ少女が肯定の意味を込めてうなずいた。
 思わず眩暈がしてしまう。
 サンタ少女の武器を持った事で、サンタ少女の変身能力がなくなってしまうとは思わなかった。
 サンタ少女の力は、誰もが望まないうちに勝手に私の方へと強制的に移ってしまったということになる。

//雪乃
「も、戻らないのかしら? 私がこの武器を返せばあなたの力が戻るとか、そういうことはないの……?」

 正直、私にはこんな力などいらないし必要ない。
 返せるものならすぐにでも返したい。
 だけど、サンタ少女は答えない。
 それは暗にもうどうしようもないと言っているようなものだった。
 あの場から助かったのは非常にありがたかったけれど、後に残された問題はあまりに大き過ぎた。

//サンタ少女
「ご、ごめんなさい……だけど、時間が経てば徐々に力が戻ってくると思うから……」

 ただ、こうしても仕方ない。
 力を私が奪ってしまったとするのなら、それをどうにかしなければならない。
 それは……不本意だけど、仕方のない事だとは思う。
 何より、助けてもらった恩は返さなければいけないのだから。
 元はといえば、こうなったのは私が原因なようなものだ。
 それにまぁ、私にはどうせ守りたいものとかそういうのは何もない。

 だって、生きていても辛い事ばかりだから。

 この世界に退屈していたのは事実だったし、別にいつ死んでも後悔はないと思う。
 だったら、サンタ姿の彼女の為に私が手伝うのは……ありなんじゃないだろうか。

//雪乃
「あの……ね、私、手伝うよ……?」

//サンタ少女
「え、てつだう……って?」

 私の言葉に、サンタ少女が驚いている。
 驚いて動きの止まっているサンタ少女に向けて、私は一方的に言葉を続ける。

//雪乃
「助けてくれたから、あなたが。だから、原因とか理由を知らなかったけど、あなたの力を無くしちゃった原因が、私にあるなら……」

 助けるべきだろう。
 人間としてそうするのが正しいのか、私がそうしたいと感じていたのか、色々な理由が頭の中でグルグルと渦を巻いている。
 だけど、結局の所……一つだけ、思いつく事があった。

 過去、私が困っている時は誰も救ってくれなかった。
 だから今さっき、化け物に襲われた時、やっぱり誰にも救われないまま、終わってしまうんじゃないかっていう考えが頭をよぎった。
 だけど、私を助けてくれた相手が目の前にいる。
 だったら、彼女の代わりに私が戦うのなんて至極当然の事なんだろう。

 だから、私はサンタ少女の顔を見て。
 まだ戸惑いの色を浮かべている瞳を覗き込み、心の中に芽生えた感情をストレートに伝える事にした。

//雪乃
「私、あなたを手伝う」

 ――こんな私を、助けてくれたのだから。
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2010年08月12日

聖夜乙女雪乃 序章(2)

//サンタ少女
「とりあえずここから出ないとね、立てるかにゃ?」

 サンタ少女は陽気に、どこか砕けた口調で話しかけてくる。
 でも、私の頭はまだ回転が鈍っているのか、言葉が口からどうしても出てこない。
 あまりに非日常すぎる現実、目の前で起きている状況、それらがどうしても自分の中でグチャグチャとした思考になってしまう。

//サンタ少女
「大丈夫だよ、さっきの化け物はもういないから。ね?」

 無言になってしまった私を心配したのか話しかけてくる。
 そんな屈託のない笑顔を浮かべる彼女に、私はちゃんと助けてくれたお礼を言わないといけない。
 そう思って声を出そうとした時だった。

//雪乃
「……ッ!」

 そこで私の目に飛び込んできた、別の化け物の姿。
 自分の股間に張り付かれた恐怖が脳裏をよぎり、お礼を口にしようとしていた顔が思わず引きつってしまう。
 不意に現れた化け物は、サンタ少女へと飛びかかっていく。

//サンタ少女
「きゃぁっ!? こ、このっ……離れなさいよぉっ!!」

 頭部へと化け物がからみつき、サンタ少女はバランスを崩してその場で倒れる。
 そのままサンタ少女は必死に化け物を捕まえようと手を動かし、格闘していく。
 だが、化け物は素早くサンタ少女の死角に回っていき、なかなか身体を掴ませない。

//サンタ少女
「このっ……ちょこまかとっ……」

 そんなサンタ少女と化け物を戦いを、私は見ていることしか出来ずにいた。
 自分が手を出した所で何もできないし、それは邪魔にしかならないとわかっている。
 ただサンタ少女に助けられたのに、私の身体は萎縮して、動いてくれない。
 このままではサンタ少女の股間にも張り付いてしまうかも知れない。
 そうなったら、いかに彼女でも化け物を引き剥がすのは容易ではないだろう。
 それは私が身をもって経験させられた事で、理解している。

//雪乃
『でも……私には……何もできないだろうし……』

 頭をよぎるその思考。
 私の身体は動かない。
 あの化け物の形状が、私の股間に張り付いていた化け物と同じ形だというのが、恐怖を呼び起こしてくる。
 息を呑み、ただサンタ少女が勝つことを願いながら、私は彼女と化け物の戦いを眺めることしか出来なかった。

//サンタ少女
「きゃぁぁぁぁっ!!」

 だけど、私の願いはむなしく、それは天に届かない。
 化け物はサンタ少女の攻撃を器用にかわして、ついに彼女の股間へと張り付く。
 私がさっき聞いた股間へとおぞましい化け物は張り付き、がっしりと逃げ場無くその状態をキープする。
 大きな悲鳴をあげ、サンタ少女の表情に焦りの色が浮かび上がった。

//サンタ少女
「こ、このっ……は、離れなさいよっ……くっ……くぅっ!!」

 オムツのように股間に張り付いている化け物を、サンタ少女は必死になって引き剥がそうとする。
 だが、化け物は股間にしっかりと張り付いて離れない。
 それどころか、サンタ少女に抵抗をあざ笑うかのように化け物は尻尾をサンタ少女の口内へと突っ込んでいく。

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//サンタ少女
「ふぐぅぅぅぅっ!!」

 サンタ少女の口一杯に化け物の尻尾がねじ込まれ、サンタ少女はくぐもった声を上げで身体を震わせる。
 そして、化け物はそこを見逃さなかった。
 サンタ少女の化け物を掴んでいた手がゆるみ、化け物はその身体を軽く震わせる。
 一気にサンタ少女の膣内へと自分の触手を挿入していった、それが傍目で見ている私にも理解出来てしまう。
 それほどまでに、一方的な凌辱劇が開始されてしまった。

//サンタ少女
「うあぁぁっ……あ、いやぁぁぁぁぁっ!!」

 化け物に挿入された痛みに、サンタ少女が絶叫する。
 ジタバタと暴れて化け物を引き剥がそうとするが、挿入された状態は化け物の生殖器がサンタ少女の生殖器に入り込んでいる訳だ。
 だから、それが自然と股間の所で引っかかり、そう容易に抜けるはずも無い。

//サンタ少女
「うあぁっ……こ、このっ……は、離れっ……離れなさいよっ……」

 サンタ少女のくぐもった悲鳴が私の耳に届く。
 本当は助けに行きたい。
 だけど私の足は恐怖に震えて動かない。
 私はその場に立ち尽くしながら、サンタ少女を見ていることしか出来ない。

//サンタ少女
「ひぁぁぁっ……ひぁっ……あぅ……っくっ……うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! んぐむぅ、んむううぅぅッ、うぁっ、いやぁぁあッ! くっ……はぁぁっ……くっ、こ、このっ……は、離れっ……くぅっ……うはぁぁぁっ!!」

 サンタ少女の膣内で化け物の触手が激しく暴れているのか、サンタ少女の悲鳴が激しいものになっていく。
 化け物の責めに耐えながら、サンタ少女は化け物に手をかけ、必死にそれを剥がそうと努力を続ける。
 しかし腕力だけでは化け物を外す事も出来ないのか、化け物はグチャグチャと水音を立てながらサンタ少女を蹂躙していった。
 樹液にたかる昆虫のように、化け物がサンタ少女の愛液を吸って、喜びの声をあげているようにすら聞こえてしまう。
 その光景は非常におぞましい。
 一歩間違えば、自分がこのような目にあってしまっていたという事実、それを想像するだけで恐怖は高まっていく。

//雪乃
『助けなきゃ……助けなきゃ、でも、どうやって……?』

 もし中途半端な行動に出たら、化け物はその矛先をこちらに向けるかもしれない。
 だとしたら、私があのような目にあってしまう。
 あんな化け物に犯されたくなんてない――。


//雪乃
「はぁ……っ、はっ、はぁっ、はっ、あ……あぁぁ……ぁ……ッ、ぅぁ……ッ」

 ボロボロと私の目から涙がこぼれだしてしまう。
 恐い、恐くてたまらない、どうしようもなく、ただひたすらに恐いのだ。
 一歩を踏み出す事も、あの化け物に立ち向かうという事を考えるだけで、胸の動悸は打楽器のように激しくかき鳴らされてしまう。
 どうしたら踏み出す事が出来るのか、どうすればあの化け物を対処できるのか、今の私に何が出来るのか……?

//サンタ少女
「くはぁぁぁっ……くっ……んくっ……はぁっ……くぅぅぅっ!!」

 まとまる事の無い思考がグルグルと渦を巻き、目の前がすっかりと涙で霞んでしまっている。
 そこで慌てて、服の袖で目元をぬぐってサンタ少女の方を見た。
 その刹那、もっとも最悪な瞬間が視界へと飛び込む。

//サンタ少女
「ふぐっ!? ふぐぅぅぅぅっ!!」

 化け物は私の見ている目の前で、サンタ少女へと射精していく。
 ビクンと射精の衝撃にサンタ少女の身体が震える。
 大量に放出された化け物の精液のせいで、あっという間にサンタ少女の口元が精液まみれになっていく。
 股間の辺りにも膣内からあふれ出した精液がべっとりと溢れ出した。

//サンタ少女
「んぐぅ……うあぁ……ああっ……」

 その幼げな印象を与える肢体を精液まみれにしながら、サンタ少女は苦しげな表情を浮かべている。
 余程苦しかったのか、サンタ少女の瞳からは涙がこぼれていた。
 それなのに、化け物は再びサンタ少女を陵辱していく。

//サンタ少女
「ふぁっ……はぁぁぁっ!! やめっ……も、もぅっ……や、いやぁぁぁぁっ!! ああああっ!! ひぁっ……あっ、あひっ……いやぁぁぁぁっ!!」

 自分を救ってくれた人が目の前で化け物に犯されている。
 サンタ少女の身体は化け物に犯され続けているせいで、小刻みに震えており、その股間は完全に精液まみれになっている。
 それなのに、化け物は飽きもせずにサンタ少女を嬲り続けていjy。
 膣内はおろか、口内にまで化け物の触手が入り込んで激しく動いている。
 何度も膣内に出されたせいなのか、サンタ少女の膣内を触手がかき回すたびに、ビチャビチャと膣内に出された精液が漏れ出して地面に精液溜まりを作っていった。

//サンタ少女
「ひぎぃぃっ!! くはぁっ……あっ、あひっ……うあっ……ひぁぁぁぁっ!!」

 サンタ少女の悲痛な叫び声が私の耳に届く。
 自分を助けてくれた人が目の前で犯されているというのに、私は恐怖に身体がすくんで一歩も動けない。

 逃げるべき?
 ううん、そんな事出来るはずが無い……。
 だって私を助けてくれて、私の代わりに襲われている。
 その事を考えたら、この場所を離れて一目さんに逃げ出すなんて事が出来ない。
 だけど、私の身体は相変わらず震えて動かない。

//雪乃
『だ、だけど……私に出来ることなんて……』

//雪乃
『で、でも……このままじゃ……彼女が……』

 相反した思考が頭の中をほぼ同時に流れていく。
 逃げ出す事が出来ないのならば、化け物に立ち向かっていくしか無い。
 無いんだと、頭では理解っているはずだけど。
 だけど、その勇気が心の中から沸いてこない。

//サンタ少女
「んごおおぉぉぉっ、んぐぅううっ、はがぁっ! あ、いぎいいぃぃッ!」

 限界が近いのか、サンタ少女の悲鳴が段々と弱いものになっていき、彼女の身体からは力が抜けていく。
 このままだと死んでしまうかもしれない。
 そんな風に思ってしまうくらいに、サンタ少女を犯す化け物の責めは激しかった。

//雪乃
『な、なにか……なにか彼女を助ける良い方法はないの……』

 私は震える身体を抱きかかえながら必死に考える。
 怖いけど、逃げ出したいほどに怖いけれど、もう私にはサンタ少女を見捨てて逃げるという選択肢はなかった。
 サンタ少女を助けたい。
 それだけで私の頭は一杯になっている。

//雪乃
『と、とりあえず……ぶ、武器……なにか武器になるようなものがあれば……』

 素手で化け物に対抗するなんていうのは、それこそ死にに行くようなものだ。
 私は武器になるものはないかと辺りを注意深く見回し、道端に落ちていたあるものを見つける。
 道端に落ちていたのは、サンタ少女が持っていた武器だった。
 それが道端に所在無さげに落ちている。
 あれを拾ってサンタ少女に渡すことが出来れば……ッ。
 未だに震える身体に活を入れると、私はサンタ少女の武器が落ちている場所へと駆け寄っていく。

//雪乃
『こ、これを渡せばきっと何とかなる……』

 サンタ少女を助ける為に、私はサンタ少女が持っていた武器を拾い上げる。
 その瞬間、いきなり目の前が光に満ちていく。
 虹が爆発したような、様々な色に満ちた光の洪水が私の視界を埋め尽くし、思考の流れすらも光が疾走していった。

//雪乃
「な、なにこれっ!?」

 驚く私を尻目に、光は段々と大きくなっていき、ついには私を飲み込んでいく。
 全身が謎の光に包まれて、私は眩しさに眼を開けていられなくなる。

//雪乃
『ど、どうしたら……どうしたら……』

 突然の事に、私はどうしたら良いのかわからない。
 武器を放せば良かったのかもしれないけれど、サンタ少女を助けることが出来る可能性があるものを捨てる訳にはいかない。
 私は目をつぶって、ギュッとサンタ少女が持っていた武器を握り締める。

 ……
 ……

 それからどのくらい目をつぶっていたのだろう?
 光が収束していき、辺りがいつもの明るさに戻っていき、眩しくなくなった私はそこでやっと目を開けた。
 なにがあったのかという疑問を確かめる為に辺りを見回すけれど、特に変わったところは何もない。
 周囲の景色は相変わらずモノクロームのままで、化け物に犯されているサンタ少女の姿も変化している事はない。
 無慈悲な凌辱が続いている事に、自然を息を飲み込む。

//雪乃
『い、一体……なにがどうなってるの? ……な、なに……これ……?』

 身体の奥が熱い。
 もの凄い量の熱が私の身体に存在しているかのような感覚。
 何が何だかわからない私は自分の掌を見る。
 だけどそこに光が溢れているような、見た目での大きな変化は存在していない。
 だけど、私の身体の中には力が溜まっているかのような感覚がある。
 一体どういう事なんだろうか、何がどうなったのかわからない。

//雪乃
『でもなんだか……身体が、熱い……?』

 身体の奥にあるスイッチが入り、全身が熱を帯びているような気がする。
 ただ熱いだけじゃない、力が、自分の理解を超えた何かが全身に満ちていると確信させる感覚。
 根拠なんて存在していないのにも関わらず、今の自分なら何でも出来るんじゃないかという気持ちが沸き上がっている。
 不思議な高揚感を覚えながら、私はグッと化け物の方を見やる。

 ――震えは、いつのまにか止まっていた。

//雪乃
「待ってて……」

 自分の体内に溢れる力。
 この力を使えば、化け物に犯されているサンタ少女を助け出せるだろう。
 何故か知らないけれど、私の頭の中には力を形にする為の答えが浮かび上がる。そんなイメージに沿って、私は内側に溢れている不思議な力を一箇所へと纏めていく。
 力は私の体内で一つに収束していき、圧縮された球のような形へと身体の内側で素早く変化する。
 まるで、小さな太陽が私の中に出来たような感じだ。
 拳を握る。
 それだけで、私の手からはエネルギーがほとばしりそうだ。
 それは、涙をこぼしてヒザを震わせていた、情けない私の背中を押すには十分すぎる熱量だった。

//雪乃
「わ、わあああああっ!!」

 恐怖心が完全にぬぐい取られた訳じゃない。
 自分の口から出た言葉はおっかなびっくりだった事が、何よりも自分の心を正直に表していたと思う。
 ただ、それでも、前に踏み込んでいく事が出来なかった自分が、化け物相手に進んでいこうという意志を持った。
 そんな事実に少し驚きながらも、私はサンタ少女を救う為に化け物へ向けて走り出していく。
 たった数秒で、私は化け物の側へと接近する。

//雪乃
「このぉ……っ、離れなっ、さあいッ!!」

 化け物の身体に手をかけ、強引にサンタ少女からひっぺはがす。
 多少の抵抗をしようとしたようだったが、不思議な力が内側で渦巻いている私にとっては、化け物の抵抗は抵抗にならなかった。

//サンタ少女
「んはぁぁぁぁぁッ!?」

 強引に化け物を引きはがしたせいもあってか、サンタ少女が大きく叫び声を上げる。
 少し申し訳無い事をしたと思いながらも、それでも犯され続けるよりはマシだろうと思い、私は軽く呼吸を整える。
 そして、引きはがした化け物は、少し離れた場所でこちらへと向き直る。
 生殖行為を邪魔された事に対する怒りを向けているというのは、考えるまでもなく理解できていた。
 サンタ少女の口へ突っ込まれていた触手が、うなりをあげてこちらへと伸びる。

//雪乃
「わわっ!?」

 身体が勝手に動いて、飛んできた触手をかわす。
 そこでさらに、触手がもう一度こちらへ向かって襲いかかってくる。
 だが、その動きは私の目で捕らえる事の出来る速度だった。どのように動くか、その先端がうねってくる方向が分かれば、避ける事は難しくない。
 一歩、二歩と踏み込んで、相手との距離を近づけていく。

//雪乃
「あんたみたいのなんて、大嫌いなんだから……ッ!」

 私の事を犯そうとした化け物。
 私を助けてくれたサンタ少女に酷い事をした化け物。
 そんな相手に、躊躇も遠慮も無かった。
 私はもう何も余計なことは考えない。
 ただ拳を化け物に叩き込むことだけに集中する。
 私は拳をグッときつく握り、大きく振りかぶって化け物へと拳を叩きつける。

//雪乃
「こ、このぉぉぉぉっ!!」

 攻撃の瞬間、気のせいかも知れないけれど、私の拳が光った気がした。
 私の攻撃が効果あったのか、化け物はその一撃でピクリとも動かなくなる。
 どうして自分でもそんな事が出来たのか、わからないけど。
 とにもかくにも、突然襲いかかってくる化け物の脅威から、逃れる事が出来たのは確実なようだった。

//サンタ少女
「っ……あ、ぁぁ……あぁっ……はぁ……」

 少し離れた場所で、サンタ少女のうめき声が聞こえてくる。
 私はその声に、ハッと我に返った。
 化け物を倒せたという事実からその余韻に浸りかけていたが、サンタ少女は犯されて酷い目にあってしまった。
 すぐにでも何とかしないと……いけない。

//雪乃
「だ、いじょうぶ……ですか……?」

 大丈夫なはずが無い。
 そう頭では理解していたはずなのに、私の口からはそんな言葉が漏れる。
 化け物に犯され続けていたサンタ少女は意識を失っていた。
 それでもサンタ少女の身体はビクビクと震えている。
 全身も化け物に犯され続けたせいで、化け物の精液まみれだ。
 サンタ少女は見るも無残な姿になっていた。

//雪乃
「あ……あぁ……」

 私がもう少し早く助けることが出来たなら、サンタ少女はここまで無残な姿になることはなかった。
 化け物を倒せたとはいえ、それは明らかに遅かった。
 私は結局、サンタ少女を助けることは出来たのだろうか?

//雪乃
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 情けない。
 もっと早く私が勇気を出して動いていれば、ここまで酷い姿にはならなかったのかもしれない。
 化け物を相手にして勝ったはずの私の心には、苦い何かがジワリと拡がっているように思えた……。
posted by -Noel Valkyrie制作委員会- at 04:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 聖夜乙女-雪乃-

2010年08月04日

聖夜乙女雪乃 序章(1)

街中は今日も賑やかだ。
CD屋からは流行の曲が流れ、洋服屋のショーウィンドウには今期の新作が並んでいる。
喫茶店では新メニューの看板が踊り、楽しそうに放課後を満喫している学生とすれ違う。
街は明るく、すれ違う人々は誰もが楽しそうだった。
そんな中を学校帰りの私だけが、何の感慨も持たずに歩いている。
街の喧騒の中、居心地の悪さを感じながらわずかに歩調を早めて。

とはいえ、それは当然のことだとも言えた。
私は楽しくも面白くもない、そんな日々にもう興味を失っていたから。
現実に絶望していると言ってもいいかもしれない。
今だって、街中を歩いていても興味を引かれるものなどない。
音楽も洋服も食べ物にも興味がない。
目に映るもの全てがどうでも良かった。

友人と呼べる人は、いない。
学校に行った時、友人がいないから勉強しかやる事は無く、休み時間はなるべく教室にいないようにしている。
ただ、勉強をする事、友人を作るという事、そういった日々の生活に私は興味を完全に持たなくなっていた。

一体いつから自分はこんな風になってしまったんだろう。
いつの間にか、気がついたら私は何の目標も持てなくなっていた。
ただ漠然とその日一日を生きている。
楽しいこともない灰色の世界の中で一日が過ぎるのを待ち、ただ寝て起きるだけの毎日。
それをもう何度も何度も繰り返している。
これをあと何回繰り返さなければならないのだろう?

ただ、自殺しようという気持ちにはならなかった。
生きていて何か目標があったり、やりたい事がある訳じゃないけど、このまま……ただ何となく死にたいとも思えない。
私は結局、何がしたいんだろうか。
何をするために生まれてきたんだろうか。

答えの出ない自問自答を繰り返し、生きている。
ゆっくりと生き続けている。
いつかそんな日々に答えが出るのかな……?

//雪乃
『あぁ、今日もまた一日が無駄に過ぎていくなぁ……』

重い足取りで歩きながら空を見上げる。
曇天に覆われた空は、私の心と一緒でどんよりと曇っていた。
そんなものだとばかりに、私は視線を街中に戻す。
街中は相変わらずの喧騒で賑わっている。
街灯には映画のポスターが何枚も吊り下げられ、きらびやかに街を飾っている。
街が派手であればあるほどに、それが私をさらに憂鬱にさせる。

何故だろう、そこには光がある、力がある。
今の私とは大きく違う、生きているという活力のある風景。
きっと、皆、目標を持って自分を輝かせる為に生きているに違いない。
そう感じさせる何かに満ちていた。

//雪乃
「綺麗だなぁ……」

そうつぶやいた瞬間。
ピタリと、いきなり街の喧騒が聞こえなくなった。

//雪乃
「……ぇ?」

自分の心臓の男が聞こえそうな程の全くの無音の世界。
何が起こったのかわからずに、私はうろたえてしまう。
ただその静寂は、どこまでも静かで、まるで世界の終わりを想像させるような、不気味な空気を作り出していく。
そんな中、いきなり街中の風景が色を失い、モノトーンに変化する。
街路樹も車も店も、その全てが灰色に全て入れ替わっていた。

//雪乃
「な、なに……、一体何が起こってるの……」

訳がわからずに、私は身体をこわばらせる。
まるでテレビか何かである超常現象そのものだ。
無音のせいだろうか、口からこぼれる自分自身の声がやたらとハッキリ聞こえる。
私は驚きながら辺りを見回すと、あれだけいた人々の姿が見えなくなっていた。

モノトーンに変わった風景、その街中には人っ子一人いない。
もう私には何が何だかわからない。
これが現実なのかどうかさえ怪しい。
だけど、いいようのない恐怖だけはジワジワと湧き上がってくる。
これから私は一体どうしたら良いのだろうと考えてみるけれど、良い案が都合良く浮かんでくるような事も無かった。

そんな時だった。
不意に私の身体に何かが飛び掛ってくる。

//雪乃
「きゃぁっ!!」

避けることが出来ずに、私はそれを受け止めてしまいよろけてしまう。

aev001a.jpg

//雪乃
「な、なによいきなり……きゃぁぁぁぁっ!!」

自分の身体に飛び掛ってきたモノを見て、私は悲鳴を上げる。
私の身体に張り付いたのはエイリアンみたいな化け物だった。

//雪乃
「な、なによこれぇっ!! やぁっ、離れてっ、このおっ、離れなさいよっ!?」

私は必死になって化け物を引き離そうとする。
だけど化け物は凄い力で私の身体に張り付いて離れない。
それどころか、その状態のまま私の下半身へと移動してくる。

//雪乃
「ちょ、ちょっと……なに、どこ触ってっ……」

私の下腹部に化け物がジリジリと下りてくる。
必死に引き剥がそうと力を込めるけれど、化け物はビクともしない。
それでも諦めるわけにはいかないので、私は力を込め続ける。

//雪乃
「こ、このっ……は、離れなさいっ! ちょっ、や、やだっ……」

言葉が通じないのか、化け物は私の言葉には無反応で私の身体に絡み付いている。
やがて化け物は私の下半身へと移動して、私の股間へと張り付いた。
いきなり股間に張り付かれて、私は慌てて化け物を引き離そうとして殴る。
だけど化け物には全く効いてはいなさそうだ。
それでも殴り続けていくが、化け物はビクともしない。

//雪乃
「なんなのよっ!! は、離れなさいよっ!! このっ、このぉっ!!」

諦めずに私は化け物をずっと殴り続けるが化け物は動じない。
それどころか、化け物は反撃とばかりに私の股間のスリットをなぞってきた。

//雪乃
「きゃぁぁっ!?」

敏感な部分を刺激されてしまい、ビクンと私の身体が震えてしまう。
化け物はさらに何度も何度も私のスリットをなぞり続ける。
その度に、私の口からは甘い声が漏れてしまい身体からは力が抜けていってしまう。

//雪乃
『や、やだ……も、もしかして……お、犯されるの……』
そんな嫌な予感が頭の中を駆け巡る。
だが、化け物はそれが正解だとばかりに、私の股間をさらに激しく責め上げる。

//雪乃
「ひやぁぁっ……や、やだっ……離してっ……離しなさいよっ!!」

身体をくねらせて、私は化け物から逃れようとするけれど、化け物は私を逃がさない。
私の身体にしっかりと張り付いたまま、私の股間をずっと責め続けていく。
悲しいことに、私の身体は化け物の責めにイチイチ反応してしまっていた。
それが化け物にもわかるのか、さらに執拗に私のスリットをなぞっていく。
まるで犯す為の準備をしているかのように感じられて、私は助けを求めて絶叫してしまっていた。

//雪乃
「いやぁっ!! だ、誰かっ、誰か助けてっ!!」

化け物に犯されるなんて絶対に嫌だ。
私は必死に抵抗するが、化け物は私の身体からは離れてくれない。
助けを求めても、普段なら人が多いはずの街には人気が全く無い。
ただ無人のモノクロ世界が広がっているだけだ。
一体私が襲われている場所はどこなのだろう。
そんな疑問が頭をよぎるけれど、今はそんなことを考えている場合ではない。

//雪乃
「誰かっ、誰かいないのっ!! 助けてっ……誰か助けてよぉっ!! やだっ、こんなのいやっ、嫌だってばぁぁぁぁッ!」

モノクロームの世界に、私の助けを求める声だけが響き渡る。
辺りには誰もいないことなどわかってはいる。
けれど、それでも助けを求めずにはいられない。
そもそも、化け物に襲われるという非日常的なことに対して、私はどうしたら良いのかという経験が無いから、わからない。

ただそうやって助けを求めながら、私は化け物を引き離そうとする。
でも現実は非常で、誰も助けには来てくれずに、化け物は私の股間にしっかりとひっついても引き剥がす事もできやしない。
化け物は私が引き離そうとしている間も私の股間をなぞるのをやめない。
それどころか、その動きは段々と激しいものになっていき、私の身体からは力が抜けていってしまう

//雪乃
「や、やだっ……このままじゃ……ほ、ほんとうに……」

『得体の知れない化け物に犯されてしまう』

そんな恐怖心がどんどんと私の中で大きくなっていく。
どんなに抵抗しても私のやることは化け物にとっては全くの無意味。
それは私の抵抗力を奪っていくには充分過ぎるほどの結果だった。
『も、もぅ……やだぁ……』
化け物の私の股間を触る動きがさらに激しくなっていき、それに比例するかのように、私は抵抗する気力を奪われていく。

//雪乃
「っああああっ……あっ……やぁ……もぅ……やだぁっ!!」

感じたくなんてないのに、私の身体は化け物の責めに反応してしまう。
こんなに嫌な事をされているというのに、感じてしまう自分の身体が嫌だった。
もう駄目なのかも知れない。
思わずそんなことを考えてしまうが、もう自分が助かるとは到底思えない。
このまま抵抗しなければ、案外あっさりと痛みを感じるまでもなく死ねる。
痛みを感じないのだったら、そっちの方が良い気がした。

//雪乃
『どうせ抵抗しても無駄だし……助けを求めたところで……誰も来ないし……』

ただ、一つだけ疑問が沸く。
こんな所で化け物に犯されるのが、私の人生の末路だとするのなら。
私は何の為に生まれてきたというんだろうか……?

そんな疑問が頭に浮かび上がった、その時だった。
私の視界にサッと影が入り込む。
初めて自分と化け物以外の動くものを見て、私は目を見開いてその影を追う。
新たな化け物だったらどうしよう。
そう思ったのだけど、影の持ち主は私と同じ人間だった。

//サンタ少女?
「いま助けてあげるからちょっと待っててねん」

サンタ服を着た少女が私を見て自信満々に言ってくれる。
サンタ少女は突然のことに呆気に取られている私に近づくと、化け物に手を伸ばしてガッチリと化け物の身体を掴んだ。
そして、彼女の指先が青白い光を放ち始め、サンタ少女は私に取り付いていた化け物を引き剥がし始めていく。

//サンタ少女
「このっ、離れなさいっ!!」

ミリミリと私の股間から化け物ゆっくりと引き剥がされていく。
あれだけ力を込めて色々とやったのに、どうにもならなかった化け物が、今は簡単に私の股間から離れていく。
不快感に満ちた感触が無くなり、思わず私は安堵の声をコボしてしまう。

//サンタ少女
「も、もう少し〜」

これで最後とばかりに、サンタ少女が力を込めると、ついに私の股間から化け物が引き剥がされた。
化け物が私の股間から離れた途端に、私は化け物から離れて距離を取る。

//サンタ少女
「このっ、飛んでけーっ!!」

サンタ少女は化け物を掴んだ手を離さずに、そのまま大きく振りかぶると化け物を遠くに放り投げた。
ベチャッという音を立てて化け物が道路に叩きつけられた。
その様子を満足そうに見てから、サンタ少女は私の方へと振り向いた。

//サンタ少女
「大丈夫だった?」

//雪乃
「あ、う、うん……だい……じょうぶ……」

サンタ少女の問いかけに、こくこくと頷く。
彼女が助けに来てくれなかったら、私はあともう少しで犯されてしまうところだった。
安心して私はほっと胸を撫で下ろす。

//サンタ少女
「ど、どうしたの? どこか痛い?」

何も言わない私に、サンタ少女が心配そうな顔で私の顔を覗きこんでくる。

//雪乃
「あ、ち、違いますっ」

サンタ少女の言葉に、私は慌てて首を振って否定する。
『な、何を黙ってるのよ。お礼を言わないと』
助けてくれたのに、私は彼女にお礼一つ言っていない自分に気がつく。
私はお礼を言おうとして、サンタ少女に向き直る。

//サンタ少女
「ん、どったん?

お礼を言おうとした私は、堂々と立っているサンタ少女の姿を見て思わず言葉を飲み込んでしまった。
モノクロームの世界に立つサンタ少女の姿は勇ましく、私はその姿に羨望を覚えてしまう。
もし自分が他人が襲われているような、あんな場面に遭遇したら、果たして彼女のように助けに来ただろうか。
得体の知れない化け物に恐怖して、襲われている人を無視して逃げていたかもしれない。
勇気がなく、いつも俯いてばかりの私には、躊躇なく私を助けに来てくれたサンタ少女の姿が眩しくて仕方がなかった。


posted by -Noel Valkyrie制作委員会- at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 聖夜乙女-雪乃-